フォートナイトの若年層課金問題に大人ができることを考える。元教師でゲーマーの視点から。
日本で最も人気のあるバトルロイヤルゲームと言えば「フォートナイト」でしょう。
特に若年層への浸透はすさまじいようで、その人気を当て込んで多くの動画実況者さんがフォートナイト実況に励んでいます。
ゲーム性や雰囲気はもちろんのこと、基本無料であることやさまざまなプラットフォームでプレイ可能であることなど、若年層に受けやすい要素を兼ね備え、「モンスター」のような存在へと成長しました。
フォートナイトと言えば、現在アプリ手数料を巡ってAppleと係争中ですが、今日取り上げるのはSNS上をにぎわせた若年層(主に小中学生)の課金問題について。
一体何が問題となっているのか。大人として取りうる対策は何か。
ゲーマーかつ元教師の視点から考えました。
引用:フォートナイト公式サイト
スキンで強さは変わらない。でも見栄を張りたいお年頃
見た目だけに千円超えもある世界
フォートナイトでは、キャラクターの見た目などを変更する「スキン」の販売を収益の柱としています。
スキンはいわゆる「ガチャ」のようにキャラクターの強さに影響するものではないものの、やはり基本的には、お金を払って入手できるスキンのほうが見栄えがいいようです。
私自身はゲームをプレイする上で見た目はまったく気にしないタイプで、初期スキンや無料で入手できるスキンでもいいんですよね。「マインクラフト」のスキンも、ベースキャラのスティーブをちょっといじっただけの感じですし。
でも世間一般はそうではないのでしょう。だからこそ基本無料でガチャがないゲームであっても、ビジネスとして成り立っているわけですからね。
フォートナイトでは、調べてみると千円以上するようなスキンもあり驚きを隠すことができません。自分の子どもが買おうとしていたら全力で止めますね。子どもいないけど。
日常と密接すぎるがゆえの問題
スキンの良し悪しでマウントを取り合うケースもあるようで、私としてはゲームの実力ではなくそんなことで争うのは非常にバカバカしい話だなと思いつつ、それが起き得ることも理解できます。
若年層は人間関係が狭く、普段学校で会うような友達がそのままゲームも一緒にプレイするフレンドになっているケースがほとんどです。
フォートナイトではフレンド同士が長い時間行動をともにしますから、相手のスキンがどうしても気になってしまうのでしょう。
顔も見たことのないフレンドとは違い、「よく知っている人が持っている」というのは、より強力な動機となります。
スキンの良し悪しでトラブルが起きてしまえば、それは学校生活にも少なからず影響を及ぼすことでしょう。
それが嫌だから親に無断で課金をしてしまうような子どもが出てくるのも、まあある話だろうなとは思います。
課金制限は簡単にすり抜け。プレゼント機能にも問題あり
各ストアにおいて年齢による課金制限(ペアコントロール機能の一部)を提供してはいるものの、保護者の無知を突いて勝手に解除することも可能ですし、万全の対策とは言えません。
基本無料アイテム課金ゲームの問題点は、一つのゲームにほとんど際限なく課金できてしまうことです。
当てるまで引きたくなる「ガチャ」とは異なり、好きなものを選べるスキンは問題が起きづらいようにも思えますが、そこは相手も商売ですし、欲しくなるようなスキンを次々と出してきます。
さらにフォートナイトにはスキンをプレゼントする機能もあるようで、それは小学生や中学生もプレイするゲームとして、かなり問題のあるシステムではないかと感じています。
Appleを訴えるのも結構ですが、EpicGamesは若年層の保護をもう少し真剣に考えてほしいものですね。
大人の心がけで過剰課金は防げる
課金システムを理解しよう
若年層のトラブルを解決するために必要なのは、大人がフォートナイトというゲームを理解するということです。
別に好きになれということではなくて、最低限課金周りの仕組みはしっかり把握しておくべきでしょう。
定期的に課金履歴をチェックすることは、過剰な課金に対する抑止効果に繋がります。課金もしていないのによさげなスキンを持っていれば、それはフレンドからもらった(または脅し取った)ものである可能性もあります。
スキン入手の目的化を防ぐ
「ゲームの善し悪しを決めるのは課金額ではない」ことを徹底することも大切になるでしょう。
本来はゲーム自体を楽しむものであるのに、スキンをゲットすること自体が目的化していないか、子供に問うてみる必要があります。
すぐに次のスキンが欲しくなるということは、「スキンを購入してもすぐ飽きる」ということ。それでいいのでしょうか。
ゲームを楽しむだけであれば、お金は一切かからないのですからね。課金をして運営を支えるのは、子どもに求められる役割ではありません。
緩やかに引き離す選択肢も
あまりに手を焼くような状態であれば、フォートナイトから引き離すことも選択肢に入ります。
これはゲーム機を隠したり、アンインストールしたりして強制的に奪うのではなくて、段階を踏んで進めていくことが大切になります。
例えば大人の方から、違うゲームに誘ってみてはどうでしょうか。
「クリアすれば終わり」のゲームでどこかでキリをつける習慣をつけたり、純粋に技術を競い合うゲームを楽しんだりするのは一つの手でしょう。
Youtuberは「別世界の人」
冒頭にもお話したとおり、若年層におけるフォートナイト人気を当て込んで実況を始めたYoutuberは少なくありません。
彼らが次々とスキンを着替えるのを見ていると、それを見ている子どもたちが欲しくなってしまうのも致し方ありません。
子どもをターゲットにするならもう少し自制的であってほしいと思いつつ、私たちにそれをやめろと言う筋合いはありません。
それならせめて、「彼らはそれをすることでお金を稼いでおり、真似できる存在ではない」ということをしっかり伝える必要があるでしょう。
一般プレイヤーがスキンを購入しても、そこから収益が発生することはないのです。
【終わりに】大人はゲームから目をそらすな
バトルロイヤル系ゲームは、ゲーム業界にとって近年最も大きな発明の一つであり、そこでこのような問題が起こってしまうのは心苦しい限りではあります。
一方で、基本無料アイテム課金のモデルがここまで成長した現状では、同じような問題は今後も存在し続けることになるでしょう。
最近は衰退しつつあるものの、もしはまったのが「ソシャゲのガチャ」であれば、もっとひどい事態も考えられます。
大人の皆さんにはぜひ、子どもを守るという観点でゲームについてもっと学んでほしいと思っています。
実際に教育現場にいたものの実感として、教師を含めた大人たちは、ゲームに対して無知であったり偏見をもっていたりする人がまだまだ多い印象があります。
(子どもたちとゲームの話をしていたらお説教されたことは今でも忘れない。)
受験期にドラクエやパワプロに没頭しつつ、ちゃんとそれなりの学力を維持してきた私としては、「ゲームと付き合わない」ではなくて、「ゲームと正しく付き合う能力」を身に付ける必要があると考えます。
時間や欲求を管理する能力は、ゲームに限らずあらゆる場面で生きてきます。勉強だってそうですよね。
「子ども任せ or 完全管理」という極端な二択ではなくて、子どもたちの自主性を尊重しつつ締めるところは締める。そんな感じで向き合っていただけたらと思います。