「龍が如く7 光と闇の行方」クリア。新主人公「春日一番」と新世代コマンドバトルの虜になりました【プレイレビュー】
2020年1月に発売されたPlayStation4ソフト「龍が如く7 光と闇の行方」。
有名人が多数出演し、任侠ストーリーを楽しめる人気シリーズの続編で、本作ではバトルシステムの一新や新主人公の採用などの大きな転換が図られています。
シリーズではおなじみの寄り道要素も含め、ひとまずメインストーリーをクリアした時点での感想をまとめました。
なおメインストーリーのネタバレは、事前に公開された情報以上のものはありませんのでご安心ください。
新主人公「春日一番」に共感
本作の主人公である「春日一番」と、前作までの主人公であった「桐生一馬」は、まったく異なる人物像です。
暴力団「東城会」に所属した点では共通しますが、桐生一馬が後に東城会の組長にまで登り詰める立場にあるのに対し、春日一番は三次団体の下っ端。ソープランドで産まれ親も分からないという人物です。
桐生一馬にあったかっこよさとは対象的に、春日一番はどこか頼りなく、「そこらへんにいそうなちょっと怖い兄ちゃん」みたいな雰囲気があります。
そのような立ち位置ながら、「極道世界に生きる人間なりの正々堂々さ」を武器に、強者達に臆せず立ち向かう様は、私にとっては好感をもてる部分でした。
春日一番という人間に最も大きな影響を与えたであろう「親っさん」に銃で撃たれてもなお、変わらぬ信頼を寄せ続ける「過剰なまっすぐさ」は、何が真実か見極めるのが難しい現代において、とても貴重な存在のように思えます。
大きな力に振り回される中でも自分らしさを失わない、春日一番の思いが報われてほしいと、最後まで願いながらプレイすることができました。
ドラクエ的RPGへの転換は大成功
本作に「ドラゴンクエスト」(ドラクエ)への深いリスペクトがあることは、プレイをしていればすぐに分かります。
スクウェア・エニックスやドラクエ生みの親である堀井雄二さんには許可を取っているとのことで、かなり大胆な表現も見られます。
本作の開発段階において、春日一番の人物像が先にあったのか、「ドラクエ的RPG」への変更が先にあったのかは分かりません。
しかしコマンドバトルや仲間とともに戦う本作のスタイルは、春日一番という人物像によくマッチしています。
ソープランドで産まれた春日一番は、多くの従業員たちに可愛がられながら、そして個性的な神室町の住人たちに支えられながら成長してきました。
そんな春日一番にとって、仲間とともに戦うのは極めて自然なことなのです。
そしてターン制コマンドバトルに関しては、力量さえあれば一方的に打ちのめすことも可能なアクションバトルに対し、ほとんどのバトルで相手の攻撃を受けながら戦うことになります。
このあたりも、桐生一馬ほど圧倒的に強いわけではない春日一番を表現するのには、適した方法だったのではないでしょうか。
ターン制とはいえ、単に順番に殴り合うわけではなく、キャラクターのポジションが攻撃の結果に影響する「ライブコマンドRPGバトル」と称する形式を採用しており、ターン制コマンドバトルの新しい形を見せてくれています。
私にしてみると、「やっぱり自分はコマンドRPGが好きなんだ」と再認識するいい機会になりました。
なにかとアクション要素を入れがちな最近のRPGにおいて、アクションからコマンドへと転換した決断には、今後も挑戦し続ける意志をスタジオとして明確に示したものと言えるでしょう。
そうは言っても、「アクションが好きか、コマンドが好きか」というプレイヤーごとのジャンルの好みもあるでしょうから、さまざまな意見があるのは当然のことだとは思います。
現代社会に正面から向かい合う作品
RPGというと、ファンタジーのような架空の物語を描くか、ポストアポカリプスと言われるような、確かにあるかもしれないけど現実感は薄い世界を描くパターンが多いように思います。
理由としてあるのはおそらく、現代をゲームとして描写することの難しさでしょう。なにしろ、プレイヤーに「遊んでもらう」必要がありますからね。それは映像作品との大きな違いです。
しかし龍が如くは、シリーズを通して「がっつり現代」です(外伝は除く)。もちろん作中ほど裏世界が広がっているとは思いませんし、街中でいきなり殴られることもめったにありませんけど。
転職は「ハローワーク」ですし、宝物が入っているのは金庫。ファストトラベル(特定のポイントまで瞬時に移動する手段)はルーラではなく、料金を払ってタクシーに乗ります。
「ファストフードでひとり食事する少年」や「育児をめぐってすれちがう夫婦」など、サブストーリーの内容も現代的な要素をふんだんに盛り込んでおり、NPCたちを「その街に生きる人々」として身近に感じることができます。
そして、メインストーリー、サブストーリーとはまた違った遊びを楽しめるのが、龍が如くシリーズではおなじみの寄り道要素です。
会社経営にカートレース、バッティングセンターにリズムゲーム、将棋、バーチャファイター、パチスロなど、「これはなんのゲームなんだ」と思わせる充実ぶり。
いずれも比較的身近なゲームで、サブストーリーのところでも似たようなことを書きましたが、この街で生きている感じが伝わってくるんですよね。
メインストーリーの部分ではかなり重厚で激しい展開が待ち受けているのですが、サブストーリーや寄り道要素で待ち受けるコミカルな展開は、息抜き感覚で楽しむことができます。
サブストーリーや寄り道要素で感じる妙なリアリティのおかげで、メインストーリーも「もしかしたらこんな世界があるのかもな」という気持ちにさせてくれます。
龍が如くがネット上で話題になるとき、どうしてもネタ的な部分ばかりがクローズアップされるのですが(メインストーリー部分はネタバレになるので仕方がありませんが)、実際プレイすると印象はガラリと変わります。
なにかと自己責任が問われがちなこの時代、「法に基づいた正義」だけでは救いきれない人がたくさん存在する現状も、作品を通して実感させられることになりました。
【終わりに】多くの人にプレイしてほしい名作RPG
「龍が如く7 光と闇の行方」は、17歳以上対象の作品のため暴力表現や血の表現なども少なくはなく、万人におすすめできる作品ではありません。
それでも、新しいバトルシステムと新しい主人公の春日一番は、多くのゲーマーを引きつけ得る魅力があると私は思います。
本作プレイ前は、桐生一馬という圧倒的主人公がいなくなることへの不安もありましたが、春日一番が最高すぎました。
「任侠ものだから」「コマンドRPGに変わったから」「シリーズ物だから」などの理由で本作のプレイをためらっているのだとしたら、それは非常にもったいないことでしょう。