SEKIROなどフロムゲーは難しすぎても問題ない。ゲームの難易度に関する議論に「アクションゲーム苦手」の私が思うこと
フロムソフトウェアから発売された「SEKIRO」は、同社から過去に発売された「ダークソウル」などの系統を受け継ぐ高難度アクションゲーム、いわゆる「死にゲー」です。
過去作を上回る売り上げも予測されるほど好調なスタートを切ったSEKIROですが、海外メディアを中心に「難しすぎるからイージーモードを付けて」との声が挙がっています。
こうした意見に対して、この手のアクションが大の苦手である私がもっている、ゲームの難易度に関する考え方を紹介します。
スーパーマリオオデッセイのバランスの良さ
大ヒットした作品の中で、巧みな難易度調整を行っている例として挙げられるのが「スーパーマリオオデッセイ」です。
本作は通常クリアであればさほど難しくはなく、この前小学一年生の甥っ子がラスボスであるクッパを倒していました。ただ「パワームーン」集めが一種のやりこみ要素となっており、それをすべてを集めるにはそれなりのテクニックが要求されます。
そしてどうしてもクリアできないというプレイヤーのために、「おたすけモード」を用意しています。体力が倍になったり、止まっていれば回復したりと、これを利用すればかなり遊びやすくなります。
あらゆるプレイヤーの期待に応える難易度調整としては、近年発売された作品の中でもトップクラスだと思います。さすが任天堂のマリオ作品といったところでしょうか。
SEKIROが高難易度でも評価される理由
引用:SEKIRO公式サイト
一方でSEKIROのように難しく、おたすけモード的な存在を用意していないゲームも少なくはありません。
それは開発者サイドの確固たる意志があってのものであり、一部ゲームファンの反発を招くことは当然予想しての行動です。それでも多くのファンが付いてくるのには、いくつかの要因があります。
ひとつは、高難度アクションをクリアしたからこその爽快感です。マラソンを完走したり、山を登り切った後のような感覚にも近いものがあるでしょうか。難しいけどやり切ったという体験が、ファンに強い印象を残します。
もうひとつは、「やられることのネガティブさが少ない」こと。やられるたびに長いロード時間が発生したり、大きく前に戻されたりしていては、それにうんざりして離脱するプレイヤーも多くなるでしょう。評価される死にゲーは、そのあたりの配慮があります。
高難易度ゲームであっても、あまりに理不尽なものはやはり受けませんから。評価されるのにはそれ相応の理由があります。
イージーモード要求に感じる疑問
イージーモードが必要だと主張する人の中には、こんなことを言う人もいます。AUTOMATONの記事から引用します。
フロム・ソフトウェア作品について、「イージーモードが必要だ」と唱え続けてきた記者としては、ForbesのDave Thier氏が挙げられる。Thier氏は3月末、フロム・ソフトウェアはプレイヤーを尊重するためにも、『SEKIRO』にイージーモードを追加すべきだと主張する記事を公開したことで賛否を呼んだ。氏の考えとしては、『SEKIRO』の魅力は難易度だけでなく、徹底した世界設計やキャラクターデザインにもある。ゆえに、ゲームが苦手だったり、同じボスと何度も戦うのが嫌なゲーマーにも、そうした側面を楽しむ機会を与えるべきだという言い分だ。『SEKIRO』の本来の難易度で遊びたい人はそうすればいいし、そうでない人には難易度を調整するオプションを与えよ、というわけだ。
確かにSEKIROの世界観にそそられるというのは、納得ができる意見です。ただし開発者が「高難度だからこそこの世界観とゲームバランスが保てている」と考えるのであれば、安易にイージーモードを導入することが好ましいこととは限りません。
なにもゲームはSEKIROしかないわけではありません。世界観が素晴らしい作品は他にもたくさんありますし、その中にはずっと難易度が低いものもあります。
それに今の時代は、YouTubeやTwitchなどの動画共有サイトがあります。そこでは多くのプレイ動画が投稿されており、世界観を楽しむならそれを見るだけでも十分でしょう。もちろんプレイしてこそだという意見はあるでしょうが、それはあまりに贅沢というものです。
少なくともメディアは、難易度を作品の評価基準にするべきではない
今回は高難易度がゆえに発生した議論を取り上げましたが、「ヨッシークラフトワールド」のように、難易度が低いからと言って評価を下げられることもあり、簡単な話ではありません。
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そもそもゲームをプレイする人のレベルはいろいろです。SEKIROレベルの歯ごたえを求める人もいれば、ヨッシーやカービィでもちょっときついと感じる人もいます。スマホでポチポチするだけという人もいるでしょう。
この件に関して、ゲームファンは案外冷静なのではないでしょうか。そのゲームがどれくらいの難易度なのかは、事前情報やパッケージなどからでも伝わってきます。シリーズ作であれば、過去作から大きく乖離することもほとんどありません。
ゲームメディアにおいては、難易度は評価の基準にするのではなく、指標の一つにとどめておくべきです。そして世界観、ゲームシステム、プレイフィーリングなどを総合的に判断して、ゲームの評価をしてほしいですね。
【終わりに】議論があるのはいいこと
日本の大手ゲームメディアは絶賛するばかりですから、海外メディア経由とはいえこうした話題が日本でも取り上げられるのは、とてもポジティブなことだと思います。
プレイヤーにも向き不向きがあるように、ゲームメーカーにも向き不向きがあります。カジュアル寄りのオールマイティを意識する任天堂もあれば、高難易度の中に快適さを追求するフロムソフトウェアのような会社もあるからこそ、ゲームは面白いのではないでしょうか。
ありがたいことに、ゲームの選択肢は数限りなくあるのですから。