ファミ通の「デス・ストランディング」癒着疑惑。確かによろしくないけど、日本ゲームメディアってそんなもんじゃないのって話

2023年9月4日

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GIGAZINEにこんな記事が出ていました。

「デス・ストランディング」に公平なレビューをするはずのファミ通関係者が登場してしまい国内外で批判が集まる(GIGAZINE)

小島秀夫監督の最新作「デス・ストランディング」にファミ通の浜村弘一氏が登場し、さらにファミ通のクロスレビューで同作を40点満点と評価されていることが批判の対象となっているようです。

客観的に見ておかしな話ですし、海外メディアが問題視するのはよく理解できます。ただ私個人は、「日本のゲームメディアって昔からそんなもんやん」としか思いませんでした。

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そもそも厳しい論調がない日本のゲームメディア

日本でネット記事も配信しているゲームメディアの大手というと、「ファミ通」「4gamer」「電撃オンライン」「電ファミニコゲーマー」「AUTOMATON」「IGN japan」あたりが思い浮かぶでしょうか。

この中で、作品やゲーム会社に対して厳しい論調になることが少なくないのは「IGN japan」「AUTOMATON」くらいであり、それ以外のメディアで厳しい評価であったり、ネガティブな話題が掲載されたりすることはほとんどありません。

運営上のトラブルにも寛容

例えばスマホゲームでトラブルが発生したときも、独自の見解で記事を掲載することはないに等しく、公式発表を紹介するのみです。

2019年にやらかしたスマホゲームといえば、「魔界戦記ディスガイアRPG」が記憶に新しいところです。半年以上の長期メンテナンスを経て、再リリースの時期が近づいています。

リリース初期に多くのゴタゴタが発生した際にも、日本のゲームメディアは公式情報ベースでしか報道していません。

つい最近、接続テストに合わせて各メディアのレビュー記事が上がっていますが、もちろん絶賛の嵐。4gamerに至っては

一応の注釈をしておく。本作は元々2019年3月にローンチされたのだが,魔界ならではのゴタゴタがあったのか。主にインフラ系の不具合により,当月にクローズされ,半年以上におよぶ負荷対策などを経て,今この季節に舞い戻ってきた――といったヒストリーを背負っている。

運営チームによると「10月11日までに予定していたスケジュールは滞りなく完了しました」とのこと。つまり,我々は「たぶんもう今度は絶対大丈夫です!」と聞いたことにしておけばいい。プレッシャーになるのは本意ではないが,不退転の決意には,期待の声を返すべきである。

引用:魔界から舞い戻った「ディスガイアRPG」を,接続テスト前に遊んだ(4gamers)

こんな調子であのトラブルを書いてしまう始末です。

そうでなくても、日本のゲームメディアの記事から、その作品に対する本当の実力を知る作業は困難を極めます。

どんなありふれたソシャゲでも、ファミ通や4gamerにかかれば「過去に似たような作品なんて存在しない、素晴らしいアイデアを詰め込んだ期待作」に見えてしまうのは、もはや職人芸と言えるでしょう。

海外メディア酷評のAnthemにすら好意的

もう一つの例を紹介します。

2019年、期待度の割に低い評価を受けた作品の一つといえば、Electronic Artsの「Anthem」であることに異論はないでしょう。

海外メディアでは大変厳しい論調で書かれたAnthemですら、ファミ通や4gamerではマイナス評価が数行で言及された程度です。

気持ちのいいアクションとハクスラの楽しさが詰まった「Anthem」インプレッション。パワードスーツ“ジャベリン”で空を自由に飛び回れ(4gamer)

ハクスラの中毒性と爽快なコンボ!『Anthem』が叶えてくれた”子どものころの夢”【プレイレビュー】(ファミ通)

逆に言えば、基本的に甘い評価しかしないこれらのメディアが、わずか数行とはいえマイナス評価を下したというのは、かなり重大な事態であることの証になってしまっています。

ちなみに海外系のIGNでは、

発売時点の『Anthem』は――残念ながら――「不完全なオンラインRPG」の典型的な例だ

引用:Anthemレビュー(IGN)

として、65点という厳しい評価を下しています。

ゲームメディアだけではなく、日本の古いメディア全体の問題

日本のゲームメディアの多くは残念ながら、プレイヤーではなくてゲーム制作者の方を向いて仕事をしていると言わざるを得ません。

もっともこれは、ゲームメディアに限ったことではありません。例えば芸能関係の話題でも、一部大手事務所の不祥事がテレビや大手スポーツ紙で報じられない事例は、数限りなくあります。

それどころか、それらの事務所とトラブルを抱えてしまったタレントが不当なバッシングに晒されたり、テレビ出演が困難になったりする事例も昔からあり、近年ようやく問題視されるようになっています。

記者クラブ制度に代表されるように、日本の古くからあるメディアと取材対象の距離が近すぎることは、しばしば批判の対象になります。

日本を代表するゲームメディアの代表がゲーム作品に出演してしまったこの一件は、そうした事例の一つに過ぎません。

取材対象者がメディアに好意的に扱ってもらおうと働きかけるのは当たり前のことであり、それをそのまま受け入れるのはメディアの代表者としてあるべき姿なのでしょうか。

仮にレビュワーがそれとは関係なく評価をしていたとしても、読者はそう受け取らないでしょう。

ファミ通の40点満点はさすがに高すぎるとはいえ、「デス・ストランディング」は海外メディアでも普通に評価の高い作品です。

浜村弘一氏の行動が、「デス・ストランディング」の評価に疑念をもたせることになってしまったのは、非常に残念なことです。

ゲーム会社への過剰な忖度はないか

私はいくつかのゲームメディアで執筆経験があり、中にはゲーム会社のPR記事を掲載するような、そこそこの規模のメディアもありました。その頃の話です。

ちょうどスマホゲームの「クラッシュ・オブ・クラン」が流行していた時期で、さまざまな会社から見た目だけ変えたほぼコピーのような作品が立て続けにリリースされていました。

そんなとき、とあるスマホゲーム大手の作品をレビューするよう依頼されました。1時間ほどプレイしてみて、世界観こそ異なるもののどう考えてもクラクラがベースにある作品だと分かりました。特段のオリジナリティも感じられません。

本当は「クラクラの影響を強く受けた作品」と書きたかったのですが、かなり抑えた表現で「ゲームシステムはクラクラをイメージすると分かりやすい」と下書きを提出しました。そして修正要求がありました。

今はもう活動していないメディアの話ですが、多分こういうことが当たり前に行われているんだろうなと感じたのを記憶しています。

ゲームをプレイする側からすれば、「○○の影響を受けている」というのは一番イメージしやすい表現なのですが、確かにファミ通や4gamerでそういう表現を見かけることはほとんどありませんね。

海外だと「あの作品に影響を受けました」なんて開発者が発言することは普通にありますし、「ドラゴンクエストウォーク」なんかでも堀井雄二さんが「ポケモンGO」に影響されたと明言しているのですが、なぜかそういう表現は、日本の大手ゲームメディアではあまり好まれないようです。

最大限好意的に解釈するのであれば、「先入観なしに遊んでほしい」という狙いがあるのかもしれませんが、それはレビューする側が配慮すべきことではありません。

仮に似ている部分があっても、その上でその作品オリジナルの部分を紹介すればいいのであって、私にはゲーム会社への過剰な忖度のように思えてしまいます。

「ドラゴンクエストウォーク」が証明したように、ある面で似ていてもそれ以外の部分でオリジナリティにあふれた作品であれば、プレイヤーには十分に受け入れられます。
忖度

ゲームの客観的な評価を知る方法

私はそもそも他人の評価なんて興味がなく、自分が面白そうと思ったゲームだけをプレイするタイプです。とはいえ評価を確認してから購入を判断したいという需要が少なくないことは、十分に理解しています。

いい評価も悪い評価もちゃんと知るにはどうしたらいいのか、いくつかの方法を挙げておきます。

メタスコアのmetacritic

海外メディアの評価を集めた「metacritic」というサイトがあります。各メディアの評価を集計し独自に数値化した「メタスコア」も出していますので、おおよその評価を知るサイトとしてはもっとも優秀でしょう。

個々のメディアのレビュー記事は自分と見方が異なるケースも少なくはありませんが、数値化された全体の数字を見るとだいたい納得する感じに仕上がっています。

なお海外メディアのレビュー記事を読む際には、

  • レビュワーがプレイしているのは発売前のバージョンのため、発売日の時点で修正が入っている可能性がある
  • 日本人ゲーマーが好む要素とずれがあることも

などを考慮しておく必要があります。

IGNやAUTOMATONなどの新しいメディア

先ほども紹介しましたが、「IGN japan」は海外系のメディアであり、厳しい評価もそれなりに掲載します。注目作品はほとんどすべて取り扱っています。

「AUTOMATON」は、必ずしも多くの作品を網羅しているわけではないものの、ゲーム会社のトラブルやネット上の話題など、一般的なゲーマーが興味をもちやすい内容を取り扱っています。

この2つのメディアは、スマホゲームの「事前登録○万人突破!」みたいなプレスリリースベタ貼り記事がなく、「AUTOMATON」に関してはPCゲームの話題もそこそこ多いので重宝しています。

もちろんこれらのメディアであっても、執筆するのは1人の人間ですから、考え方に違いがあるのは仕方のないことです。だからこそ、多くの評価を集積した「metacritic」に価値があるのでしょう。

ファミ通や4gamerでマイナスのコメントが出たとき

基本的には好意的に書くこれらのメディアですが、ネガティブな要素が隠しきれないときは、先ほど紹介したように「サラッと触れる」ことがあります。

そんなときは要注意で、作品の評価に大きな影響を及ぼすネガティブ要素である可能性がありますので、ただちに海外メディアや実際にプレイした人の評価をチェックしましょう。

SNSは要注意

TwitterなどのSNSは、個々の意見を知る上で有効な手段の一つです。

ただネタバレが書き込まれていることも少なくはないので、積極的におすすめするのは難しいですかね。

情報の真偽を確かめることなく拡散してしまう人が多いのも、問題点としては小さくありません。

まとめサイトはおすすめしない

作品に対する悪い評価が集まる場所というと、思い浮かべる人も多いと思われるのがまとめサイトです。

まとめサイトは個人の意見の集合体で構成されており、たしかに遠慮のない意見が並ぶ場所ではあります。

しかしまとめサイトにおいて、作品の本当の評価が知れると思ったら大間違いです。

まとめサイトは、PVを稼いで広告収入を多く得ることを目的としています。そのためには正確性よりも、「いかに刺激的であるか」を意図して書かれています。

一般的に「褒めること」よりも「ディスること」のほうがPVが伸びる傾向にあり(ゴシップ誌と同じ原理)、まとめサイトにおいて否定的な意見を集めた記事が多くなるのは必然です。

そもそも記事で取り扱うコメントの選出は恣意的であり、仮に「好意的な意見9割、否定的な意見1割」であったとしても、その割合通りに記事を構成することはまずないでしょう。

絶対数からすればそれほど多くないネガティブな意見を過剰に取り上げ、炎上してる風に仕立てるのは彼らの得意技です。(そこそこ名前のあるメディアでも同じことやるけど。)

【終わりに】自分の感性を大切にしたい

「デス・ストランディング」とファミ通の一件からいろいろ考えてみました。

幸い現在は、ネットメディアの発達によりさまざまな意見に接する機会に恵まれています。

そうしたものを参考にしつつも、最後は自分のフィーリングで面白いゲームを見つけていきたいですね。

私も多少なりとも参考になるよう、自分のプレイしてそれなりに遊べたゲームは、その感想を紹介していくつもりです。