「Against the storm」レビュー。楽しい部分がずっと遊べるローグライト・シミュレーションゲーム
本日ご紹介するのは、ローグライト系サバイバルシミュレーションゲーム「Against the storm」です。レビューまでのプレイ時間は35時間ほどです。
一般的なこのジャンルの作品における序盤から中盤に当たる部分を無限に楽しめることや、バランスの良いローグライト要素などが評価され、高い人気を集めています。
執筆時点での対応機種はPCのみ。日本語対応かつ、翻訳の質がかなり高いためプレイしやすい作品です。
中盤以降のマンネリ感に独自のアプローチ
戦略系のゲームにはいくつかの段階があります。
- ほぼなにもないところから拠点を構築していく序盤
- 拠点がある程度発展して余裕ができつつ、まだまだ外部の危険に気が抜けない中盤
- 拠点がほぼ完成し、危険にも難なく対処できる最終盤
アクションサバイバルやRPGなどでも似たようなところがあるかもしれませんが、その中で「序盤が一番楽しい」というゲーマーは少なくありません。いちから作っていく段階の楽しさや、中盤以降は流れ作業感が高まってしまうこともあるでしょう。
これは私自身も感じることがあって、その昔に信長の野望をプレイしていたとき、日本の約3分の2を勢力下に置いたところで満足してしまい、そこで終了とした経験があります。
このマンネリを回避するために取り入れられる方策としては、敵勢力を強くする、より困難なトラブルが発生するなどが一般的ですが、このAgainst the stormではなんと、「序盤プレイしたら終わり!はい次!」という、まったく新たな方法で解決を図っているのです。
Against the Stormの流れ
では、ここからはAgainst the stormのゲームの流れとおすすめポイントを見ていきましょう。
やるべきことが明確で初心者にも優しい
クリアの鍵となるのが「名声」と「女王の不満」です。プレイヤーは女帝に拠点の発展を託された提督という立ち位置です。
女王は気が短く、時間とともに不満が溜まっていきます。これが画面右下にある赤いゲージで、これがいっぱいになると拠点づくり失敗となります。
そうなる前に、プレイヤーは指令をこなして女王の怒りを和らげ、名声を規定値までためればクリアです。名声は女王からの指令をこなしたり、イベントをクリアしたりしたときに増加します。
指令やイベントという形でやるべきことが明確になっているため、このジャンルでありがちな「チュートリアルだけやったら後は丸投げ」ということはなく、ジャンル初心者にもプレイしやすい設計になっています。
士気をコントロールして拠点を拡張
拠点の発展を担うのは、種族が異なる入植者たち。初期は3種族で、人間は農業、ビーバーは木こり、リザードは狩猟といった具合に、それぞれの特性を活かして役割を振ると、効率よく働いてくれます。
入植者は一定間隔でやってきて、人が増えれば拠点の発展は加速します。ただし彼らには士気が設定されており、食料が足りなかったり、焚き火の火が消えたりして士気が0より少なくなると、死亡や逃亡により人が減っていきます。
最初は何を置いても食料を、続いて建築や焚き火の燃料として必要な木材を集めることが優先されます。入植者の数は限られていますから、指令の達成も見定めつつ、人員を適切に割り振っていきましょう。
サバイバルシミュレーション系にしては珍しく、敵との直接戦闘がないのは本作の特徴です。代わりに「森の敵意」があり、上がりすぎると士気の低下によって入植者の減少を招くことになります。
木こりを増やしたり、経過年数をかけすぎたりすると森の敵意は上昇します。ある程度の上昇は避けられないため、士気上昇系の施設を建てるなどして士気をコントロールすることも大切です。
空き地イベントの攻略も鍵
ゲームスタート時の拠点は狭く、資源も十分ではありません。森を切り開いて木を入手しつつ拠点を拡張します。伐採で空き地と自拠点がつながると、空き地イベントが発生します。
空き地イベントは、特定の資材を投じることでクリアし、報酬のアイテムを貰えたり、名声が獲得できたりします。空き地で資源ノード(石や肉などを採取できるポイント)が見つかることもあります。
空き地には、通常、危険、禁断の三段階があり、これは開ける前から表示されています。レベルが高い空き地ほどよい資源ノードがある可能性が高いものの、クリアするまでデバフがかかるイベントが発生するため、クリアの目処が立たないうちに開けると大変なことになります。
いずれにしろ、空き地をどんどん開拓しないことには拠点の完成は見えてきません。少なくとも危険な空き地までは、勇気を持って切り開きましょう。ある程度の資源や「道具」があればきっとクリアできます。
バランスの良いローグライト要素
指令の達成に必要な施設の中には、最初から建てられないものもあります。名声が一定値に達したときに設計図が与えられるのですが、これがランダムなため欲しいものが手に入らないこともあります。
指令での名声獲得が難しくなれば、空き地イベントで名声を稼ぐ方向に切り替えるしかありません。とはいえ、空き地で見つかる資源ノードや指令もランダムですし、ランダム要素はかなり多めです。
とはいえ、理不尽なほどランダムかと言われるとそんなことはなく、方針を転換してクリアすることはそれほど難しいことではありません。このあたりはよくできたバランスになっています。
レベルアップして新たな拠点へ
名声、もしくは女王の不満のどちらかが上限に達するとその拠点でのプレイは終了します。プレイ状況に応じて経験値やアップグレードアイテムがもらえます。
レベルが上がることで新たな施設が開放されるほか、アップグレードでは女王の不満を上がりにくくしたり、入植者の移動速度を上げたりといったパッシブスキルを獲得でき、今後のプレイをより有利に進められるようになります。
一つの拠点をクリアすると、隣接するより遠くのエリアで新たな拠点を作ることになります。本拠点であるスモルダリングシティから遠くなればなるほどクリアの難易度は上がります。
拠点の選択ごとにプレイする難易度を選択できるため、始めは低い難易度でプレイし、ゲームに慣れたりパッシブスキルが増えたりしたところで難易度を上げてより多くの報酬を狙うのが基本的なスタイルになるでしょう。
また、この世界では一定期間ごとに「ブライトストーム」がやってきて、これまでに作った拠点がリセットされてしまいます。このとき、プレイ実績に応じてアイテムがもらえます。
ブライトストームの後は、またスモルダリングシティからやり直し。ただ、これを繰り返すことで一度のストームまでの期間で進める距離が長くなります。このゲームの目的の1つである封印の森を目指して進みましょう。
終わりに
「Against the storm」の紹介でした。サバイバルシミュレーションに馴染みがない人でも比較的プレイしやすく、難易度選択やローグライト要素で熟練プレイヤーでもやりごたえがあるバランスになっていると感じました。
一方、ひとつの拠点を長く育てるゲームではないため、箱庭的な要素が好きな人は寂しさを感じるかもしれません。
とはいえ、近年リリースされたサバイバルシミュレーションの中では、間違いなく抑えておきたい作品の1つと言えます。機会があればプレイしてみてください。