EUの欧州委員会がSteamのおま国を断罪。日本で解消される日は来るのか?

2023年8月22日

※当サイトの商品リンクには、アフィリエイトプログラムを利用しているものがあります。

2019年4月5日、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、PCゲーム配信サービスのSteamを運営するValveと5つのパブリッシャーに対し、特定の地域での配信を制限する施策に対して独占禁止法違反であるとの見解を示しました。

この5社には日本の企業である「バンダイナムコ」「カプコン」も含まれており、対象各社にはこうした施策をただちにやめるように要求しています。

このニュースをきっかけとして、ゲーマー界隈では再び「おま国」問題の議論が沸き上がっています。

スポンサーリンク

EUの下した判断について

壁

ゲームソフトの配信、あるいは販売が地域によって一律でないことは、ゲーマーであればよく知られていることではあります。

日本ではゲームの配信がなかったり、あるいは日本版だけ価格が高かったりすることも少なくはなく、「おま国」「おま値」などの言葉が定着しています。

ゲームをプレイするのにディスクが必要だった時代ならともかく、データをダウンロードすれば遊べる時代にこのようなブロックはどうなのかと、批判的に語られることが多い状況です。

それに対してEUは、少なくともEUの範囲内でそのようなブロックを実施するのは違法と判断したわけです。

もっともこれは、EUという地域の特殊性があります。EUはいくつかの国の連合体ではありますが、実質的に一つの国としてふるまうことがあります。その中で区別することを禁じたわけであって、これを日本に例えると「関東では配信するけど九州ではだめ」みたいな感覚に近いものがあります。

ですのでこのEUの判断が、すぐにおま国の排除につながるかといわれると、そういうことではありません。ただEUという大規模な連合体で下された判断ですから、今後の議論に大きな影響を与えていく可能性はあるでしょう。

なぜおま国が起きてしまうのか

おま国やおま値が発生する理由は、メーカーやソフトによってさまざまです。

  • 日本ではゲーム機版を売ることになっているから、PC版はなるべく売りたくない
  • 日本では広告宣伝にかけたお金を価格にしっかり上乗せしたい(広告代理店、特定メディアも?)
  • 日本ではパブリッシャーが違い、その利益を確保するため

最初の2つは国内メーカー、3つ目は海外メーカーの日本向けローカライズでよく見られるパターンです。

小売りメーカーの利益を確保するためという観点で語られることもありますが、PCゲームの大半、家庭用ゲームでもダウンロード販売が増えつつある現状では、その要因は薄れていくでしょう。

もっともこうした生々しい話をメーカーが認めることはほとんどなく、苦しい言い訳をしてゲーマーの反感を買うケースもあります。

一つ目に紹介する記事は、おま国の後始末が不十分で大炎上というケースです。

PC版「三國無双8」日本・中国語を選択できたことを“不具合”としてブロック レビューが赤壁炎上状態に(ねとらぼ)

こちらでは、「日本ではPS4だけで売りたい」というコーエーテクモの事情が見え隠れしていますね。それにしても、日本語を不具合として削除しその告知を日本語でするというのは、呉の軍師・周瑜もびっくりの火計の術です。

この炎上が効いたのか、PC版はのちに日本語や中国語にも対応することになりました。もっともこの作品自体の評価が低いのは、おま国以前にゲーム性の問題でもあります。

2つ目に紹介する記事には、ゲームメーカーがおま国の理由について答えるという貴重な事例が掲載されています。

国内メーカーが”Steamで日本語版を販売しない理由”(DAMONGE)

ただこの言い訳も苦しく、日本でPC版が売れないからと言って、それをわざわざ削除する理由にはなりません。日本語音声やテキストを抜くのにもコストがかかるわけですし。

逆にコーエーテクモと同様、「日本ではゲーム機だけで売らなければいけないなんらかの事情」があるとの印象を、強くもたせることになってしまいました。

日本でのおま国解消は遠い未来の話?

いろんな国の国旗

EUがおま国に対して判断を示したということで注目を集めたこのニュース。

日本メーカーによる日本外しをたびたび経験してきた日本のゲーマー、特にPCゲーマーにとっては、これをきっかけにおま国の解消を期待したいところではないでしょうか。

ただし日本の場合は、他国と比べて権利関係が極めて複雑、というよりは今の時代に対応できていない部分が多いのが現状です。

変わりつつある消費者の意識とは裏腹に、現物を購入することがベースにあるさまざまなシステムが、我々に不自由を強いている気がしてなりません。

聞きたい歌手が少ない音楽ストリーミングサービス、デジタル配信だと「かまいたちの夜」化する雑誌など、その例を挙げればきりがありません。

デジタル化の流れは止めようがありません。しかし2019年にもなって「スクショ違法化」なんて話が議論されてしまう日本においては、乗り越えるべき壁がたくさんあるように思われます。

そういえばGoogleのゲームストリーミング「STADIA」が2019年に欧米からスタートするのですが、おま国問題にどう対処していくのか気になるところです。「そもそも開始時期からしておま国だろ」という話はありますけど。